一応イメージ提供
「私」→短髪で快活な感じの女の子
「君」→長髪で大人しい感じの女の子
私の手には、前の方にだけ七色の紙が巻かれた細い棒のような物。
これの先端に火をつけて遊ぶらしい。
まあ、要するに、手持ち花火っていうやつだ。
別に今日初めて触るわけでもない。
ただ、こんなものを手にするのは随分と久しぶりだ。
触ってみても懐かしい、と思えないくらいに久しぶりだ。
だから、初めてのものを触れるような感覚になってしまってるのだろう。
人間の脳ってのは曖昧だ。
幻覚を見る事だってあるそうだし。
と、そんなどうでも良いことを考えてたら、私を誘った君がライターに火を灯して近づけてくる。
何となく意地悪したくなって花火の先端に火が触れる前に火から逃げる。
君は無言で追いかける。
私も無言で逃げる。
そして、次第に馬鹿らしくなってきて、笑いが零れてきてしまう。
君も同じようにして笑ってる。
君は火を持ってるんだから、ちゃんとしてなさい。
そう言うと、ごめんごめん、と謝りながら君は笑うのを止める。
それから、付けるよ、だなんて改まって聞いてくる。
私のせいなのはわかってる。
でも、それがなんだか可笑しくて私はまた笑い出してしまう。
そしたら今度の君は頬を膨らませた。
顔全体で不満を表してる。
私に笑われたのが気に入らないようだ。
もう一度私は謝って、今度こそ笑うのを止める。
君はもう、なんて言いながらも、ライターにもう一度火を灯して花火の先端へと近づけた。
ついに火が燃え移る。
最初の内は地味な赤い炎。
けど、次の瞬間には七色の光が噴き出してくる。
赤色、橙黄、緑色、青色、藍色、紫色。
虹の色が私の前で弾けている。
けど、それは虹とは比べ物にならないくらい華やかで、まるで宝石箱をひっくり返したようでもある。
私はそれに見惚れる。見惚れ続ける。
だって、だって・・・
いつかは終わってしまうことをしってるから。
次第に虹色の本流は弱まってくる。
色の数も減ってくる。
そして、最後に赤を残して、一本の花火は終わった。
終わっちゃったね、と私は笑う。少し寂しい。
まだまだ一本目だよ、と君は笑う。
うん。そんなのはわかってる。
でも、やっぱりこれっきりだと思うと私は寂しくなってしまう。
だって、これは君の作った特製の手持ちは花火だから。
もう、会えない君の作った花火だから・・・。
無性に泣きたくなってしまうのだ。
そんな私を見て、君はやっぱり笑ってるのだった。